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医療関係者の方へ

顎関節の疾患と
治療法について

このページは、顎関節症治療に関わる医療者の皆様向けに、顎関節疾患の概要とその外科療法の役割について記しております。

顎関節のつらい症状に
お困りの患者様へ

当院では、顎関節の病気について専門的な診療を行っております。あごの関節の痛み、開口障害、運動障害、雑音や炎症、腫瘍(良性悪性のできものなど)、さらに顎関節近辺の難治性疾患などでお困りの患者様は、お気軽に受診の上、ご相談ください。国内でも最先端の診療レベルで対応させていただきます。内容は、詳細な診察、専門的な画像診査のうえ、幅広い範囲の選択肢の中から、患者様にとって最適な治療を十分に説明のうえ提供させていただきます。

あご関節と
周囲に起こる病気について

顎関節(がくかんせつ)は、頭蓋骨(側頭骨)としたあご(下顎骨)のあいだにある特殊な関節ですが、さまざまな種類の病気が発症します。その概要は以下のようになっています。

顎関節外科の対象疾患で最も多いのは1番目の顎関節症で、このうち顎関節学会が提唱する症型分類では、関節円板障害、変形性顎関節症であり、全患者のうち保存療法が奏効せず、根治的治療を希望する、1~2%程度の割合が外科療法の対象になるものと見積もられます。
次に、近年増加している顎関節脱臼です。患者数などの実態は未だ不明な点がありますが、頻回に繰り返す習慣性脱臼や整復不能な陳旧性脱臼が手術対象となります。
3番目として、顎関節腫瘍および腫瘍類似疾患が挙げられます。これらは顎関節あるいは、その周辺組織に発症する良性、悪性腫瘍、これには稀な発生頻度ではありますが、骨腫や軟骨腫が、悪性では骨肉腫、軟骨肉腫が挙げられ、さらに腫瘍類似疾患の代表例には、滑膜性軟骨腫症や偽痛風などが挙げられます。さらに稀ではりますが、関節嚢胞としては、ガングリオンと滑膜嚢胞があります。
4番目として、口腔癌や顎骨腫瘍の顎関節波及involvementがあり、TMJの外科処理の必要性は珍しくありません。
5番目に、顎関節自体ではありませんが、咀嚼運動に関連して発症する、咀嚼筋腱・筋膜過形成症があり、長期に渡る頑固な開口障害は外科療法の適応として認識されております。
6・7番目として、古くから手術されてきた顎関節強直症および関節突起骨折は、外科療法の対象となることが多く、口腔外科領域の診療対象疾患です。

以上、顎関節部に発生あるいは関連して外科療法の対象となる疾患は多彩であり、三次医療機関である大学病院の歯科領域、口腔外科部門では、高度かつ先端的な診療体制の確立が求められます。

  • あご関節の痛み・運動障害・
    雑音・筋痛など

    顎関節症
    (関節円板障害・変形性顎関節症)

  • あご関節が外れて口が
    閉じられない・頻回に外れる

    顎関節脱臼
    (習慣性、陳旧性)

  • あご関節にできものができ
    腫れて引かない

    顎関節腫瘍・腫瘍性病変
    (良性・悪性)

  • あごの骨や歯ぐきなどに
    病気があり関節へ波及した

    顎骨病変の顎関節波及

  • あごの筋肉が固まり、
    こりなどで開口しにくい

    咀嚼筋腱・腱膜過形成症

  • 過去の骨折のあとやリウマチ
    などで治癒せず
    開口できなくなった

    顎関節強直症・リウマチ

  • あご関節部の骨折のため
    開口できず、噛めなくなった

    関節突起骨折

先端的な診断・治療のご説明

  • 顎関節症(関節円板障害・変形性顎関節症)

    顎関節症は、顎関節疾患のうちで最多ですが、5種類の病型に分類され多彩多様で、各病型に適切な治療法を選択します。最も多いのが関節円板障害(約7割)で、うち半数は関節雑音(クリック)を、残りの半数は疼痛性ロック(関節痛と開口障害)を示します。このうちの2、3割の方は自然軽快すると見積もられますが、基本治療であるマウスピースと内服治療に対して難治性の場合は、必要に応じてMRI検査による精密検査を行います。3か月程度の治療で改善が無い場合は、関節洗浄と開口訓練を行い5、6割の患者様は軽快が得られます。つぎに多いのが慢性関節炎(約2割)で、症状(関節痛)は比較的軽いため、マウスピースによる咬合治療や鎮痛消炎剤の内服で改善しますが、痛みが強い場合は関節注射(消炎剤)を行います。もともと重症の方は少なく、これら一連の治療で8割程度の患者様は軽快します。次に多いのが変形性顎関節症(約1割)で、長期の関節痛と開口障害の発現と軽快を繰返すのが特徴です。

    難治性で頑固な症状がある患者様では、関節注射や外科療法(関節形成術)をお勧めし、7、8割の方は症状改善します。また咀嚼筋障害(約1割)も慢性的な咀嚼筋の痛みやこわばりがみられ、マッサージやマウスピースによる外来治療が主体となります。一部の顎変形症や咬合異常を伴う方では手術が有効な場合があります。最後に、精神的ストレスが過剰となり心因性の顎顔面、口腔内の症状を訴える患者様がおられます。2、3%と稀ですが、併せて関節部の異常が存在すると、深刻な不定愁訴の原因となり難治性の病型です。
    顎関節疾患の診断は、顎関節や嚙み合わせなどの細かな診察やレントゲンやMRIなど画像検査を行い、適切な臨床診断と治療法の選択を行います。なお、診療の基本姿勢は、患者様の利益を最優先とし、リスクと有益性の両者を十分ご理解いただいたうえで施行いたします。

  • 顎関節脱臼(習慣性・陳旧性)

    顎関節脱臼では、脱臼の状態をお聞きして、自己整復法のご指導から開始しますが、頻回の習慣性脱臼や長期間外れた状態を示す陳旧性脱臼では外科療法が有効です。これについても、様々な手術法がありますので、各患者様の状態やご希望に合わせて選択しております。なお、重い基礎疾患をお持ちの患者様には、場合により局所麻酔での手術を行います。

  • 顎関節腫瘍・腫瘍性病変
    (良性・悪性)

    顎関節腫瘍(良性、悪性)、腫瘍性病変などでは、基本的に外科療法が行われますが、確定診断を得たのちに稀に手術回避できる場合などもあり、よく相談して治療法を検討します。

  • 顎骨病変の顎関節波及

    口の中やあごの病気が顎関節へ波及し、開口障害や咀嚼不全をきたした場合は、手術に限定せず、歯列矯正や適切な抗菌剤投与なども含めた総合的な診療を行います。

  • 咀嚼筋腱・腱膜過形成症

    咀嚼筋腱・腱膜過形成症では、手術による拘縮除去が必要ですが、術後のリハビリは手術と同等に欠かせず、長期的な観察治療が必要となります。

  • 顎関節強直症・リウマチ

    顎関節強直症・顎関節リウマチでは骨癒着部の切り離し手術(顎関節授動術)とリハビリ治療、安定後には長期にわたる経過観察が必要です。

  • 関節突起骨折

    関節突起骨折では、保存的治療が有効な場合も少なくないため、術後機能を最優先とし、外科療法の適応は慎重に行います。

以上、当院では総合病院や大学病院と同等あるいはより専門的・先端的な診療を遂行しており、顎関節症状で苦しんでおられる患者様のお役に立てることを基本として業務しております。より詳細な内容については、関連サイト(https://segaminatsuki.com/)をご参照ください。

外来治療と手術治療の概要

01徒手的関節授動術
(マニピュレーション療法)

厳密クローズドロックに対して、外来で簡便に施行できる徒手的関節授動術で、時に劇的なアンロック効果をもたらし、スプリント、Nsaidとの併用により、30%程度の奏効率が得られます。なお、IVROを提唱したWilliam Bell教授は、症状改善は関節症状のみならず、咀嚼筋症状の緩和効果が⾼いことを述べています。

02関節注射(関節穿刺)・
パンピング治療

広義の外科療法に含まれる関節穿刺およびパンピング療法です。これは早期のクローズドロックを呈する顎関節症に効果的で、時に劇的なアンロック効果をもたらします。

03上関節腔洗浄療法
(複数穿刺による洗浄治療)

関節腔洗浄療法またはarthrosenntesisと呼ばれる、上関節腔の還流治療で 、複数の注射針を上腔に留置して30分程度をかけて洗浄するものです。

04関節鏡視法・鏡視下手術
(細い内視鏡を用いた関節授動術)

広義の外科療法に含まれる関節穿刺およびパンピング療法です。これは早期のクローズドロックを呈する顎関節症に効果的で、時に劇的なアンロック効果をもたらします。

05関節円板切除術・関節形成術
(関節切開による開放)

18世紀末に紹介された、関節開放による関節円板切除術や関節形成術は、適応はさらに多く、長期にわたる関節疼痛と開口障害の改善には有効です。

顎関節症に対する関節円板切除術(関節痛と開口障害が改善した)

06関節脱臼手術
(観血的整復術、再脱臼防止手術)

観血的関節脱臼手術の適応患者は比較的多く、症状に苦しむ難治症例の救済は必至です。

07腫瘍や炎症など顎関節周辺病変の
合併摘出手術

周辺組織の疾患により、顎関節部の同時切除を必要とする場合に、顎関節の機能と形態を温存した手術法を検討いたします。

  • 下顎骨悪性腫瘍の術前CT像 (*病巣)

  • 術後レントゲン像(顎関節を含め摘出再建した)

最後に 〜医療関係者の方へ

最後に、今回提唱させていただきました顎関節疾患に対するネットワーク構築について、他施設の医療機関の皆様のご協力をお願いできれば幸甚に存じます。なお、より詳細については、関連サイト(https://segaminatsuki.com/ )をご参照願えれば幸いです。